お手本 その3(キャリアウーマン)
彼女は、出張の際には、必ずプールとジムがある綺麗なホテルを予約した。
私達の業務は営業のようなものだったので
私は彼女と頻繁に出張に行っては、寝食を共にする機会に恵まれた。
正直他人はどうでもいいと思っている彼女と長時間一緒にいるのは、
気遣いと和を大切にする国から来た私には、結構しんどかった。
余りにも自分と違った彼女の生活習慣に驚かされることの連続だったけど、
同時に、彼女のその魅力の裏舞台を見ることができる、絶好のチャンスだった。
彼女は、どこにいようが何をしようが、常に完璧に自分モードだった。
私は私がやりたいことをするから、貴方は貴方でやってね、っていう感じ。
夕方、会議や訪問を終えてホテルに着くと、彼女はまずはプールに行く。
まだ日が高いうちに、太陽に当たって日焼けするのだ。
冬でも、屋内プールに行く。
1時間程たつと、ホテルのラウンジで宿泊客にサービスでふるまっていた
白ワインのグラスを片手に、嬉しそうに帰ってくる。
ジムに行った日は、
その後、シャワーを浴びて、マニキュアをし直して、
家族と携帯で永遠と話しながら、ベッドに入って洋画を観る。
報告書などの、残った仕事?
勿論するけど、さっとやってしまう。
80%ぐらいの結果を出すと、とっととやめて、
後は、他の人の予定は全く気にせずに、自分の好きなことをする。
やらなくていいことは、決してやらない。
ジムやプールでリラックスする彼女は、ご機嫌だ。
会議の合間に抜け出して、ショッピングに行くことも卒中ある。
レンタルでオープンカーを選び、サングラスをかけて、ヒールのまま運転する。
ラテンミュージックをかけて、上手いとは言えない大声で歌う。
いつも大きなミネラルウォーターのボトルを脇に抱えては
常に水を飲んでいる。ご機嫌だ。
上司のお咎めがないのは、彼女が色気で惑わすからではない。
仕事もちゃんとやっている。
仕事は好きだ、と語ってくれたことがある。
どうすれば改善できるか、とか、新市場を獲得するには?とか、
キャリアウーマン的な会話も、それなりにしたこともある。
でも、彼女の人生のプライオリティー(優先)は、決して仕事ではない。
自分のやりたいことを、仕事の為に犠牲にしない。
キャリアは、彼女にとっては後から来た飾りみたいなものだ。
彼女という存在がまずあって、その次にキャリアがある。
キャリアがなくとも、彼女の魅力は変わらない。