年上の男性... 美のコーチ
「女性って、そういう色のネイル、良くするね。
でも、俺はさ、ベージュの...マットっていうの?
光らないタイプに惹かれるんだよね」
「それ、ネックレスかぶれ?
キスしようとした男が、引くよ」
「口をすぼめて拗ねる顔をするのは、やめな。
君は女でしょ?女の子じゃない」
「もう40?関係ないね。
あんなイイ女はいない。絶対ものにして見せる」
上記は、それぞれ違う男性との、ふとした会話に出てきたフレーズだ。
上司、会社の講師、友達...
皆、その当時の私よりも、10~20歳以上年上。
4人とも、それぞれのビジネスで成功していた実力者。
女性の扱い方、というものに慣れた人生の経験者達は、
20代の小娘だった私に、兄心?親心?からか、色々とアドバイスしてくれたものだ。
それは決して口うるさいものではなく、下心もなく、ユーモアのセンスに優れていた。
こういう種の年上の男性というのは、究極の美のコーチだ。
今ならわかる。
対する自分は、「へー、そうなんだ」と思うだけで、
彼らのアドバイスの本質を理解する成熟さは、まだ持ち合わせていなかった。
派手な色のネイルをし続け、
ゴタゴタとジュエリーをつけ続け、
「かわいい」=「美」と勘違いし、
「若い」=キレイ、と思い続けていた。
その後、10年、20年の月日が流れ...
彼らのアドバイスが、
どんな女性向け雑誌やサイトの特集よりも
大人のイイ女になるために有効であったかが、しみじみ思う。
ところで、その当時、私には、ある年上の女友達もいた。
アマチュア級の、スポーツ選手だった。
鍛え上げられた引き締まった体に、普段の装いはジーンズにタンクトップ。
ウェイブのかかった長い髪を自然におろし、化粧はなし。
サバサバしつつも、女らしさを感じさせる不思議な人だった。
そして、完璧に「自分のスタイル」というものを持っていた。
前述の最後のフレーズ、
「もう40?関係ないね。あんなイイ女はいない。絶対ものにして見せる」
と言ったのは、彼女と共通の男友達だ。
彼は、彼女に夢中だった。
昔から彼女に言い寄っているが、彼女からは「友達以上、恋人未満」と、軽くあしらわれていた。
その事を知っていた私は、ふとした会話の流れで、彼に「彼女、もう40歳になるみたいよ」と言ってみたのだ。
その時の彼の応答が、それ。
私は別に、彼のことが好きだったわけではない。
ただ、彼が、皺も一本もない若い自分には見向きもせず
アラフォーの彼女に首ったけだったので、
なんとなく面白くなかったのだ。
自分もアラフォーになってみて、ふと考える。
どうして彼が惹かれたのが、私でなく彼女だったのか。
答えは、いうまでもない。