アラフォー国際結婚ワ―ママの「清く、強く、美しく!」

小手先テクには興味なし!筋トレと良い習慣の取り入れからなる 「清く、強く、美しい」 大人の女性化計画進行中~!

貧困層

旦那の親戚にあたる若夫婦が、

休暇を利用して、初めて飛行機に乗って旅行をすることになった、と報告してきた。

 

普通の人にとっては、別に何ともない出来事だろう。

しかし、私はこのニュースに涙した。

なぜなら、彼らは、クラス社会のこの国では、貧困層に属する人達なのだ。

 

 夫婦の妻にあたる女性を、私は、彼女が10代の頃からごく身近で見てきた。

 

例外はあるにしろ、この国の貧困層の女性というのは、大体同じようなタイプなのだが(ひたすら明るく、威勢が良く、騒がしい 笑)

彼女は口数が少なく、引っ込み思案で大人しい。

背は低いが、まっすぐの黒髪に白い肌、大きな目がとても美しい。

 

しかし、可憐な外見とは裏腹に、芯の強さは親戚一。

 

生まれも育ちも、れっきとした貧困層

父親はおらず、母親は学歴もコネも財産もない掃除婦。姉妹が5人。

10数もの所帯が1つの台所や1つの洗面所を共有するような、想像を絶するスラム一歩手前の集合住宅で育つ。

プライベートもなにもあったもんじゃない。

そこに住む人たちは、まともな職に就いていない。

皆が皆、言葉にならない程貧しい。

教育など二の次の、サバイバル生活。小学校を出ていない人も多い。

男たちが汚い言葉で怒鳴り合い、夕方になると道端にバイクでたむろす。

犯罪などの危険も常に隣り合わせだ。

 

始めてこの場所を訪れたときのショックを、私は一生忘れないだろう。

向かいの建物のテラスの柵にもたれてタバコを吸う20代ぐらいの若者2,3人が、

ぎょろっとした目で、明らかに場違いな身なりの夫と私を見定めする。

正直、「とんでもない親戚を持つ男性と一緒になってしまったものだ」と正直怖かった。

(でも、彼らを良く知るにつれ、この考えは正反対になるのだけど)

日本人なら、誰もが怖気づくだろう。

 

頭が良く勤勉な彼女は、親戚の中で唯一高校を卒業した努力家だ。

前述の環境にもめげず、高校を卒業したのだ。

これは、言葉で説明するには軽すぎる事実だ。

 

私は、「貧しくても努力して環境を自ら変えるべき。それをしないのは怠けもの」と、わかったような物言いでレッテルを張る裕福層を、内心軽蔑する。

いや、貧困層の生活を知らないから、そういうことが言えるのだろう。

彼らの現実は、洒落にならない程過酷だ。

 

 

彼女が17歳ぐらいの頃。

「やっと自室が得られた。これで勉強するのが楽になる」と歓喜する彼女に案内され

その自慢の自室とやらに入らせてもらったことがある。

それまでは、母親と妹が皆1部屋で寝起きする生活だったのだ(注 5人姉妹)。

アルバイトから生活費を抜いたお金をコツコツ溜め、その部屋の使用権利の頭金を得たという。

 

集合住宅の2階の奥に位置するその薄暗い部屋は、

コンクリートの壁打ちで、窓もない。

まさに、牢獄のようだった。 

そこにあるのは、簡易ベッドと、粗末なちっちゃな机のみ。

とてもとても、ティーンエイジャーの女の子の部屋といえるものではない。

トイレに行くのでも、自室を出る時は頑丈なカギを付ける。

一足部屋を出れば、前述のような柄の悪い若い男たちが、廊下をうろうろしている。

 

ここで育った若い女性の多くが、小学校を出ることなく、

掃除婦や子守り等の仕事をし始め

そして10代で妊娠し、母となり、大体が離婚してシングルマザーになる。

しかし、彼女は違った。

 

30歳を超えた今では、親戚一同を背負って立つ「長」の役目を果たしている。

外見上はまだうら若い少女のような、可憐な彼女が。

 

今回、飛行機で行くのは、ささやかな国内旅行。

勿論、生まれて初めての飛行機。

夫婦ともども初めてということで、夫が飛行場までついて行った。

「スーツケースの重量オーバーには罰金が課せられることを知らなかったみたいだ。

旅先で外食で出費がかさむことがないようにと、自炊する前提であれこれ食料や調理器具を沢山詰め込んでいた。彼ららしいけれど、びっくりしたよ」

と、夫は驚いていた。

 

今回、飛行機に乗れたのは

別に、宝くじに当たったわけでもない。

誰かに恵んでもらったわけでもない。

運が良かったのではない。

棚ぼた的に降って湧いた話ではないのだ。

 

歯を食いしばって逆境に耐え、汗水たらして仕事をし、高校を卒業し

理不尽な理由で職を失っても、めげずにまた探し

職にありつけない姉妹や親を助け

絶えることのない数々の問題を冷静に処理し

集合住宅を追い出された一家全員を引き連れて、部屋を借り

ついに正社員の事務職にありつき

結婚して子供を産み、家具を買い、車を買い...

やっと行けるようになったバケーションには、

親戚の子供を2,3人、代わり替わり引き連れていく。

誕生日には、親戚の子供に新しいスニーカーを買ってやる。

そして今年、夫婦で飛行機で旅行へ行ってみようか、という余裕が出来たのだ。

ここに辿り着くまで、約20年。

 

 

勿論、彼女には人並みの欠点も沢山ある。

その育ちゆえに、大変失礼な言い方になるが、貧困層にありがちな将来性・計画性に欠ける考え方や生活習慣もあり、時々度肝を抜かれることもある。

でも、彼女の存在なしでは、私は旦那の親戚とうまくやっていけるとは到底思えなかっただろう。

それほど、貧困層というのは特別な層だ。

 

彼女は、裕福層を妬んだり敵視することもせず

かといって自分を卑下することもせず

淡々と、自分に出来ることをしてきた。

そして、誰に対しても対等に接する。

牢獄同様の自室の豆電球で、必死にテスト勉強をしていた高校生の彼女と

飛行機でバケーションに行く彼女は、全く違和感がない。

 

また、彼女は、自分が周りに「してあげた」ことや、自分の成功話などを語らない。

当然の如く、淡々としている。

彼女が親や姉妹、親戚の子供にしてあげている情報は、いつも他人から入る。

 

私は昔、どんなに上の人にも怖気づくことがなく、どんなに下の人にも偉ぶることがない人間になりたいものだ、と思ったことがある。

 

私は裕福層出身ではないが、そこはやはり日本出身。

その日暮らしをする彼らに比べたら、とんでもなく恵まれている。

貧困層の気持ちを心から理解できているとは思えない。

 

上のフレーズは、私ごときが言っても、しょせんキレイごとだ。

しかし、正真正銘貧困層出身の彼女は、当事者だ。権威だ。

彼女は貧しさも豊かさも知っている。

 

夫について、彼女や彼女の家族を訪ねるのは、初めのうちは苦痛だった。

余りの貧しさと厳しい現実にこちらが逆に打ちのめされる思いと、

「一緒にして欲しくない。自分は堕ちたくない」という傲慢な気持ちがあったのだ。

しかし、彼女が少女から女性になり、色々な話が出来るようになると、打ち解けた。

彼女が成長するにつれ、その見事な生き様に触れ、首を垂れる思いになった。

今では、彼女といると、教えを乞うような謙虚な気持ちになる。

 

彼女に比べて、1000倍は恵まれているであろう自分。

何をグダグダ言い訳をしているのだろう?

何を甘えているのだろう?

おざなりな言い方だが、過酷な環境にも負けず、明るくたくましく生きる彼女。

私なぞ、生い立ちや置かれている環境という意味でこれだけ恵まれているのだから

それこそやろうと思えば、何でもできるのではないか?

彼女の存在は、私に喝を入れてくれる。

 

 そして...

彼女や彼女の家族の親戚になれたことで、

私も少なからず貧困層の「当事者に関わる者」としての権利をも得つつある。

即ち、貧困層について、ささやかではあるが、インサイダーとして語れるのだ。

 

今では、これは素晴らしい名誉であるとさえ思う。

この縁に、心から感謝している。